Dinosaur Tales跡地TOPへ  H19/3  H19/4

2007年5月過去ログ

大工のDNA

2007.5.30

追加で頼んだ正面のペンキ塗りや、別会社に頼んだクーラー設置は別として、
1Fのリフォーム工事は昨日で全て終了となった
半年前の工事とは別の工務店だったが、かなり満足度の高い仕事をしていただいた
工務店が違うと、工法や投入する人数さえも違ってくること
この工務店さんがすぐには頼めないほど、予約がいっぱいである理由もよくわかった
いいお仕事をしてくださってありがとう、大工さんたち

私の父親は建設会社の二代目であった
母方の祖父も宮大工だったそうなので、本来、私には、大工のDNAが流れているはずなのだが、小学校の木工系工作も上手に作れたためしがない
父親は接待やら管理の仕事をしていたので、幼少時、大工道具に親しんだ記憶もない

ニュートンだっけか、水車とか作るのが得意だったのは?
女性だということを差し引いても、私はどうも何か作りあげる能力が薄いようである
それとも、こういった作業は、単に慣れで習得していくものなのだろうか
自分で行うべくタイルの補修を土日に予定しているのだが、今から不安でいっぱいである

泥になってみた

2007.5.28

南海に生じるという骨のない虫を泥(でい)と呼び、泥酔の「泥」はここから来ているということらしい
今の気分は、ただ泥のように眠りたい

よいでしょう
神は何故かその願いだけ、電光石火、適えてくださったのです
アンドロイドならば電気羊の夢を見る可能性もあるかもしれないが、 環形動物になった私は、もうヒトだった頃の記憶をめぐらすこともなく、ただ泥に潜り、蠕動運動を繰り返すだけであった
たっぷり、そして丹念に満遍なく泥中の栄養素を摂取し終えた私は肥え続け、
哀れ、ハンターに捕らわれて、鰓呼吸を行う脊椎動物の餌となる
私を食べた金色の脊椎動物は、金銭魚という名を持ち、ハンターには58万元が支払われたということだ
めでたし、めでたし

女傑ウオッカ

2007.5.27

競馬界には数々の名言やよく使われる言葉がある
その一つに
「皐月賞に勝つには、最速であること、菊花賞に勝つには、最強であること、そしてダービーに求められるのは、一番運が良いこと」
ちう法則がある
つまり実力だけでなく、幸運の女神を引き寄せるプラスアルファのようなものが必須とされる特殊なレースだと思われてきたわけである

第74回日本ダービー(東京優駿)がこの27日、府中競馬場で開催されたわけだが、戦後初、牝馬が優勝するという結果となった
優勝馬ウォッカは、サラブレッドの3歳同世代8470頭中、最も幸運な馬の頂点に立った

私が競馬に熱中した期間は2年あまり、あまりにも短かなマイブームで終ったのだが、いろいろなことを覚えていく過程が実に楽しかった
ネットの競馬関連の某フォーラムにも参加していたので、この頃がネットにはまっていた頂点だったかもしれない
ちなみに、日本ダービーだけ、ずっと勝てなかった武騎手が(「競馬界の七不思議」と呼ばれていた)スペシャルウィークで初勝利した1998年が私の競馬デビューでもあった
ビギナーズラックという運さえ持ち合わせていなかった私は、天才騎手福永洋一伝説に深く心酔していたので、その息子が騎乗したキングヘイロー一点買いに賭け惨敗したのである
何故、この2年間、あんなにも武が嫌いであったのか(馬券的にである、まあ、それで勝てるわけがないのだが、競馬経験がお子ちゃまでわからなかったのだろう)不思議である
ダービーの季節がめぐると、これらを懐かしく思い出す

1円入札

2007.5.26

半年前のアパートメント立ち上げの備品購入から、ヤフオクを利用するようになった
購入したものは、カーテン・外国製の非難梯子などである
カーテンは特殊なサイズのもので、量販店にも置いていないものだから、通常であれば、オーダーしなければならない
こんな規格外商品も、あるところにはあるもので、通販や展示品流れを、通販以下の価格で全て入手することができた
避難梯子も同様で、日本製のそれよりきちんとした作りになっているものを、揃えられるのだからありがたい

ヤフオクもサービスを開始したころは、お買い得品もあったのだろうが、不動産同様、これだけ、みんなが熱くなってくると、そう旨味も感じられない
みんなが欲しがらないものこそ、ネットで購入するべきで、わざわざ送料や手数料まで払って本当にお得なものなどあまりないのではないだろうか

今回ヤフオクで1円落札したもの
それは内装内壁タイル、縦横、30センチのユニット24枚である
それとて、送料を入れた総額はなんと1631円である
100円ショップで売っているタイルでも、この大きさのものはなく、業界的にもお安いのかもしれない
ああ、それなのにそれなのに、ラフォーレのバーゲンほど感動できないのは、やっぱりモノがタイルだからなのか

●トリの鍋から鉛検出のニウスを聞いて、私がこの店をはじめて訪れた時に感じた直感が間違っていなかったことを知る
嘘臭いオーラとでも言おうか
ベッドはフランス人が多いからというわけでもないのだが、●ランスベッドにした
ネットもそこそこ利用しているとはいえ、自分の中では、大切な買物だけは現物を見て購入すべし、というスタンスはこれからも変わることはないかもしれない

サルコジとロワイヤルの間

2007.5.25

2週間ぐらい、しばしの休業宣言をしようかと思ったのだが、今までも休業している時期の方が長いくらいのものだったのだから、何をいまさらという気持ちのほうが強い

トンテンカン・トンテンカンと一ヶ月の間、工事騒音で二階の住人たちには、迷惑をかけた
(現在は金槌よりは電動ドリルなので、実際の擬音は、ドドドドッが正しい)
来月初めごろにお詫びをかねての1Fお披露目パーティーを企画している
埃まみれのなか、ワインやビールに舌鼓をうつという状況も避けたいので、それまでには、掃除&備品搬入にいそしまねばならない

二階のほうはその後、予約が入ってきて、四室はお仏蘭西の方々で埋まりそうだ
一昨日、新宿のVILLAGE VANGUARDで、日本語学校での授業内容を録りました、という形式のおふざけ系DVDを見た
SAKEは、この角度で飲むだとか、ビジネス的な受答えだとか、なかなかウィットにとんだ映像集で笑かしてもらった
うちでも購入して流したいと思ったのだが、これ、冗談が冗談にならないような気がするんだよね
パーティーでは、虫プロ製作「どろろコンプリートBOX」でも流したいが、これも残酷すぎるかのう
ロワイヤルさんにも怒られそうだし

死霊の盆踊り

2007.5.24

牧野修著「リアルヘヴンへようこそ」読了
「死霊の盆踊り」とはエド・ウッド脚本、ホラー映画の題でもあるのだが、映画の内容と全く関係なく、何故かこの言葉が耳から離れてくれない
また、読んでいる最中には、キングの「ニードフル・シングス」(「呪われた町」は読んでいない)を思い出したりもしたのだが、著者のあとがきを読み、この連想もそう的外れでもないことがわかった

この作家はレトリックに富んだ人で、絶妙な言いまわしに感心させられることが多い
著者自身のあとがきの他に大森望による解説もついているのだが、これが傑作であった

未読を積み上げろ

2007.5.23

法月綸太郎著「複雑な殺人芸術」未読
法月綸太郎氏のご高名は存じあげているのだが「生首に聞いてみろ」しか読んだことがないという・・・

「複雑な殺人芸術」を読破できなかったのも、偏に海外ミステリーを知らぬという自分の不勉強から入れなかっただけなのである
ミステリー通だったら、こんな面白い本はないのじゃなかろうか
殊能将之先生が法月綸太郎氏のファンである理由を、遅まきながら納得できただけで良しとすべし

来週からは現地に入り浸る状態が続き、最悪お泊まり、ネットにつなぐこともままならぬであろう
(環境的には無線LANなのだが、工事が始まり、自分の端末を引き上げてしまったのである)
今週はいつまで更新できるかな

風水談義

2007.5.22

三浦國雄さんという方がお書きになった「風水講義」という本によると
中国の風水世界において、人間に好意を持っているように見える山や河の風情を「有情」、
逆にそっけなかったり反抗的に見える自然を「無情」と区別する概念があるのだという
(以上、新聞に連載されているエッセー「風景ザンマイ」に出ていたハナシである)

昨年から不動産のサイトや競売情報を見るようになって、
土地や建物の持つ運気みたいなものを結構意識するようになった
人気のあるエリアだとか、ないエリアも、こんな「有情」「無情」と関係があるのかもしれない

町田康がパンクな町として紹介した成増は、やさぐれ感満杯だし
青山・麻布という地名を持ちながらも、青山墓地沿い外苑西通りは、何故か潰れる店が絶えない
東京電力のOLが殺された事件で有名な渋谷松涛・円山町辺りも独特の雰囲気を醸しだしている
負のオーラを放つこれらの町を漂流するのが好きだ

改装前の飲み屋のあったアパートの1階であるが、
無理に三店舗作った間取りのせいで、空気の流れが悪く、よどんでいるかのようだった
風通しが良く、日当たりのいい二階と比べると、
ここが大きな欠点になりそうだったので、窓の数も増やし、出入り口も二つとした

工事も現在は、内装に突入し、リノベーション前の姿が思い出せなくなりそうなほど、変貌を遂げた
ただひとつ、昔ながらのタイルを使っている部分だけ、一部を残してある
縁のカーブした部分も専用のタイルが使われており、
建築士の方から、これはもう作られていない貴重なタイルだということを聞いたからである
ヤフオクに出したいほど、レトロワールドな物件であったが、
小綺麗になったらなったで我侭な私は一抹の寂しさを感じている

ドクター・中松ハウス

2007.5.21

辛酸なめ子著「おでかけセレビッチ」読了

忙しいあなた、貧乏な私の代わりに、辛酸なめ子女史が話題スポットをくまなくレポートしてくれるという有難い一冊

世田谷区「ドクター・中松ハウス」の前で「ガンつけながら車庫入れする人」を目撃した著者の一言「近所の人との関係は大丈夫なのでしょうか?」だとか
「環境に優しくファンに厳しいハロプロメンバー」と題された『「熱っちい地球を冷ますんだっ」文化祭2005 in横浜』レポートとか
「水槽の中で生きた魚たちと、バラバラ死体の魚が混在する恐ろしい光景」(切り身やイカリングが餌)が繰り広げられる品川アクアスタジアム
推定50代以上の女性がメイドで接客してくださる「伊豆・新感覚いちご狩り園」などなど

めくるめく万華鏡のような異世界への扉が日常のここかしこに開かれていることに、あなたは慄然とするはずである

照る日曇る日

2007.5.20

むう、5億6313万2913円かあ
話題の「ビッグ」で、1等7本出たというニウスが流れる

自営業の届けなるものを、税務署に出してから、宝くじを全く買わなくなってしまった
宝くじに捨てる金があれば、設備投資なり、キャッシュフローに回すべきだ、という考えが、ついつい浮かんでしまうのだ
現代の富くじは、税金がかからないという点では、良い投資かもしれないが、隕石に当たるより低い確率という点が最大の問題である

同様に自分へのご褒美などといった無駄使いも、ごっそり減ったように思う
物欲が事業欲に転換されて、差しあたって欲しいものがない状態なのだ
いかん、このままでは松下幸之助になってしまふのぢゃないだろか

知り合いの上司である某病院の院長様は、モナコグランプリを見に、来週モナコ公国へおでかけになるという
レースを一番良い席で観戦できるというセレブ別荘を二日間借りる費用だけで300萬
むろん、宿泊費は別途である
いいなあ、私も「ビッグ」で一山当ててモナコ行きてえ、と宝くじ売り場に並んでいたのが、これまでの流れだったかもしれない

現在、アパートメントの方は退出者が続くことになり、万事調子よく進んでいるともいえないのだが、危機感はあまりない
来月からは13部屋の稼動となるが、すぐ満室にしちゃる、という思いのほうが強いのである

土葬経験値

2007.5.17

東京とは名ばかり、かなりはずれた地域に住んでいるため、日中の電車での移動が長い
睡眠時間の半分は通勤に割かれる計算になるので、読書も進むというわけだ
10代の頃の感受性は、もはや古生代の海に沈むアンモナイトと化した
アバズレの鎧をまとった今、読書三昧しようが、もう滅多なことでは感動も泣きもビビリもしないぜ
そんなわけで、田中啓文の言葉を借りるなら「この世に腐るほどある感動させたり、泣かせたり、考えさせたり、癒されたりする小説」はもういらぬかもしれない

雨宮町子著「死霊の跫」読了
この人は上手いね、読ませる技術をお持ちの作家なのだと思う
ジェットコースターや日時計・蔓植物の葛(クズ)
一見ホラーとは無縁なこれらの素材を、巧みに非日常へ誘導する小道具に変換してみせた
「高速落下」「いつでもそばにいる」「Q中学異聞」「這いのぼる悪夢」「翳り」「幽霊屋敷」の六篇を収録

そうそう、土葬をテーマとした「翳り」を読んで思い出したのだが
私が某メーカーに派遣社員として勤めていた頃の話である
この会社は京都と奈良の県境に本社と工場を擁し、私はその企業の東京支店に雇われていた
本社の各部門からいつも電話がかかってくるのだが、のんびりしたもので、相手が上位の役職であればあるほど、世間話が用事の大半である
或る日の工場長との雑談で、この会社のある一帯が土葬であったことを知る
工場長曰く、近頃の若い者では土葬もできんじゃろう、けっ
ちゅう言葉が実感ありすぎで、オラ、この村さ、嫁にだけは行きだくねえ、と強く念じ
日本のチベットが未だ存在することに軽いめまいと戦慄を覚えたものであった

ドロシーの行方

2007.5.16

牧野修著「だからドロシー帰っておいで」読了
平成14年の作かー
今でこそ「言葉による暴力」さえもdomestic violenceの一部だということが、一応、世間様の常識と認知されつつあるようだが、これは社会的弱者たちによる反逆物語である

夫にとって都合のいい生活を毎日、何年も続けてきた主婦・伸江が或るきっかけから、(「オズの魔法使い」の)ドロシーのように異世界へと吹き飛ばされていく
伸江が所属していた現実世界と、妄想世界、二つの側面が同時進行して書かれているのが面白い
妄想世界は「オズの魔法使い」を下敷きとする不思議ワールドが展開

実は原典の「オズの魔法使い」にもアメリカ経済に関する寓話 説があるらしい
牧野版「オズ」では、ホームレスのライオン、不登校教師のカカシ、介護施設から脱出した老人のブリキ男といった配役が、視聴者障害者用の誘導ブロック(黄色いレンガの道)を進んで行くという趣向である

後書きで著者が「この物語を愉しいと感じるか恐ろしいと感じるかで、あなたのつらさの度合いが測れるような気もしないではない」と述べているのだが、私の測りは愉しさの方に傾いたのである
読んでいる途中、誰がドロシーの帰還を待っているのか(「だからドロシー帰っておいで」という題名の意味)疑問に感じていたのだが、最後になるほどねえ、と納得した

あるサイトの書評で知り、自分の興味にはひっかかっていた一冊であるが、やっと読むことができた
角川ホラー文庫版の表紙イラストが、内容とぴったりフィットしている点(生理用ナプキンの広告のような言い回しになってしまった)が、好感度高し

蒲魚

2007.5.15

アパートメントの1Fの工事も快調に進み、月末には竣工する見込みである
壁紙や外壁の色を決めたり、家具・備品の発注など、やたら忙しくなってきたもので更新も滞りそうだ

カマトトというのは、江戸の遊女が知らないふりをして「蒲鉾は魚(トト)からできてるの?」と聞いたことから始まった
親切に新聞で解説してくれていたので、初めて語源を知る
最近、「シラコい」という言葉も気になったので調べてみたら、これは「白々しい」という意味らしい
魚の白子から来ているのだろうか
うちのアパートメントの退室したテナントからhospitalityと評された
これは「親切なもてなし, 歓待, 厚遇; (客に提供される)宿舎」などを指す言葉であった
hospitalが病院なので、そんな意味があるとは知らん単語であったがよく使われるらしい
言葉とは奥深いものである

都市伝説よ 何処へ行く

2007.5.12

「平成都市伝説―ホラーセレクション」尾之上浩司監修 読了
田中啓文著「見るなの本」が収録されているので、手にすることとなった一冊
GW中に8割がた読み終えていたのだが、「稲生モノノケ大全」に気がいってしまったがために、ようやく残りを読み終える
都市伝説の歴史に疎いのだが、これを生み出す土壌や背景には強い興味を感じる
登り龍の勢いを持つ中国などは、この種のお話がこれからどんどん製造されていくのではなかろうか

仁賀 克雄著「ロンドンの怪奇伝説」という、18〜19世紀の英国を震撼させた「謎の怪人バネ足ジャック」・「殺人床屋スウィーニー・トッド」・「秘密結社地獄の火クラブ」 という三つの怪奇事件簿に焦点を合わせた一冊があって、バネ足ジャックは、その時初めて知ったと思う
「ロンドンの怪奇伝説」の中でもバネ足ジャックと切り裂きジャックの関係について触れられていた記憶があるのだが、 それを上手に外科手術でつなげてみせた作品が北原尚彦著「怪人撥条足男」である

田中啓文については、田中啓文というジャンルでしかない、ということを再認識しましたが、それがなにか?

呑気な三郎太

2007.5.11

再び「稲生モノノケ大全」の話に戻る
稲生平太郎少年が三十日にわたるモノノケ軍団の襲撃を悉く退け続け、最後、怪異の元締「山ン本太郎左衛門」より木槌を授かるというのがこの怪異譚の流れになっており

●わずか十六歳の稲生平太郎が数々の怪異現象を耐えた(耐えられた)理由
●妖魔が退散したわけとは/「山ン本太郎左衛門」の木槌の意味

などに新しき解釈を施し、主題としたものが「稲生モノノケ大全」の短編にも幾つか登場している

名は体を表すという諺によれば、名はそのまま実相を映す鏡であるそうなので、「平気の平太郎」という言霊のおかげかもしれない
また長所とされる美点も裏返せば短所となることは、世間でよく例のあることだ
繊細=神経質
豪胆の裏返しは、鈍感になるのだろうか
或いは、もっと大きな恐怖(たとえば戦場で毎日、死にさらされている人、強制収容所で人間として扱われていない人が怪異と出会って怖いと感じるだろうか)を抱えていたかもしれない

うちのアパートメントの三郎太(仮名)@カナダ人が、昨日退室していった
彼が三男坊であるかはつゆ知らない
余りに適当に命名してしまったのだが
世間ずれしておらず、おっとりしているので長太郎とでもすべきだったかもしれない

退室時間が迫っているというのに、彼はなんと旅行鞄を電車に置き忘れてしまった
たくさんの荷をどう運ぶというのだ?三郎太よ
同日での仏蘭西人の入居が決まっているので、彼はもう退室しなければならない
やれやれと、アパートメントの元締である私は、木槌の替りに自らのリュックサックを彼に与える
今までの海外旅行で活躍してくれたバックパッカーご用達の品である
さらば!!三郎太、達者で暮らせ

稲生家怪異譚

2007.5.10

息あらき身のかくれてもかくれてもこよい月光折れ曲がりくる      佐藤弓生「菩提町日記」

「稲生モノノケ大全」陽之巻 東雅夫篇 毎日新聞社刊読了
現在の広島県三次市で、当時十六歳の稲生平太郎少年がその住まいとする「麦蔵屋敷」にて
七月一日より一ヶ月の間、さまさまな怪異と出会ったとされる江戸時代の記録が基になっている

この話に触発され、泉鏡花、折口信夫、稲垣足穂といった錚々たる面子が書き紡いた過去の小説・戯曲・講談・随筆を集めた書が「稲生モノノケ大全」陰之巻であるらしい
こちらは未読
「陽之巻」は編者の言葉を借りるなら「自分と同時代人の書き手たちによる新たな「稲生伝奇」の競演」という位置づけにある

子供時代、この稲生家怪異譚は何かで読んだ記憶があって
陰之巻に含められたような流麗な筆によるものではなく
おそらく、子供向けに入れられたそっけないお話の一つとして
「稲生モノノケ大全」を読むまで、平太郎少年の夏の奇談はすっかり忘れていたのだが
思いもかけず至福の時間が流れた、と言っておこう

選りすぐりの十三人の作家による書き下ろしに加え、一般公募で寄せられた入選作五篇、
それをはさむようにして巻頭・巻末に、宇野亜喜良・山本周五郎の再録作品が配されている
十三の作家の作品について言えば、どれをとってもはずれがなかった
とはいえ、「稲生家怪異譚」変奏曲として私が好ましく思った作品は以下の通り

京極夏彦      旧耳袋 もう臭わない
菊地秀行      逆しま屋敷
越水利江子   釣りぎつね
小林泰三      SRP
津原泰水      夢三十夜
佐藤弓生      菩提町日記
秋里光彦      クリスタルジーレナー

SFにして怪獣小説 小林泰三の「SRP」については、もはや天晴れとしかいいようがない
眉に唾をつけ 心して読まれよ
一般公募作のなかでは「ひらさとひよこ」氏の「三次もののけ殺人事件」が面白うございましたな

格差社会

2007.5.9

都心の地価がここ数ヶ月で高騰し、建築資材も値上りしたものだから
安売りを主体とする商業施設は、まとまった用地を地価の低い地域で確保するしかなくなり
当然の結果のように、わが住居周辺20キロ圏内に、次々と巨大ショッピングセンターが登場し始めた

ある意味、東京ミッドタウンの対極にあるような店揃えである
品揃えは大差ないのだから、価格だけの競争となる
安売り競争で体力を消耗させた企業が、いずれ撤退していくのだろうが、
あと5年ほどは恩恵を享受できるだろう

文化やセンスはないが、生活必需品だけに限定すれば、食料品の商品点数も多く物価も安い
不満のあった医療施設・映画館も徒歩10分圏に整備され改善されてきたので、なかなか住みやすい場所になってきた

通販生活

2007.5.8

今朝のA新聞の「通販生活」折りこみチラシで、花村萬月が「定期購読しないではいられない理由」を語っていたので、ちょっと読んでしまう
花村氏は「芥川賞作家7人がモニターする企画」で「メディカル枕」なる商品と出会い、「まるであつらえたように頭にうまくはまって本当に寝るのが楽になって」以来、通販生活にハマったのだという

あら、素敵!!花村先生も絶賛なさるなんて!!早速、カタログハウスにお電話しませう!!

てな気分にはまずならない花村萬月を起用したところが「普通の通販」とちゃいまんねん、というココの戦略なのだろう
この際、芥川賞などといった権威もとっぱらって、「星雲賞」「メフィスト賞」「手塚賞」作家特集も組んでいただきたいと思うのだがどうでしょう

色男伝説

2007.5.6

うちのアパートメントが世界の国からこんにちは、とさまざまな人種の方たちにお泊まりいただくようになって半年余が過ぎた
スイス・ドイツ・フランス・スコットランド・オーストラリア・ブラジル・韓国等から皆様おいでになったわけだが、私が以前と比べて好感度を大きくあげた国をあげるとしたらそれはカナダなんである

カナダといえば、悲しいかな、行ったこともなかったので、メープルシロップとシルク・ドゥ・ソレイユの国としか認識がなかったのだが、初めて接したカナダ人の人なつっこさみたいなものに これはこれは、と反応してしまった
そういえば、マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」で「銃の所持率が低くはないにもかかわらず、多くの市民が家に鍵をかけずに外にでかけていく」
と、銃社会アメリカとの対比で隣国カナダの雰囲気が伝えられていたのだけれど、このへんもカナダ人のおおらか気質と関係しているのかもしれない

うちのアパートメントのオープン翌日、13日の金曜日という忌むべき数字も何のその、やってきた勇者・三郎太(仮名)、まず彼がカナダ人であった
入居者第1号でもあった彼は(実はあと1週間ほどでうちを出るのだが)ジャパニーズ・コミックの大好きな26歳の青年で、ゴミ当番を1度もさぼることのない真面目で、私のお気に入りトップなのである

そして三郎太の2週間後に入った二人目のカナダ人が世之介(仮名)である
こいつは、ホント口がうまかった
私は、実直な三郎太の方が好きであったが、世之介がうちのアパートのいいムードメーカーであったことは間違いない
年末から2週間ほど、まるで樵のような世之介の友人も泊まりに来たのだが、こちらは朴訥な大男で、こういう友達がいるならば世之介もそう悪い奴ではないのでは、と思えるほどだった

三郎太とは対照的に世之介がゴミ当番の義務を全うした日は数えるほどしかない
こいつは、どうも他所で外泊しているに違いない、と私は睨んでいたが、数ヶ月が過ぎ
●彼女と暮らすので世之介がうちを出る
●相手はなんと職場では恋愛禁止の生徒(世之介は外国語教師の職を得ていた)
という情報を聞かされ、さもありなん、集団生活でのお約束が守れない世之介が出るなら、まあそれも良いかもしれぬ、ぐらいに思っていた

こうして世之介が出て更に一ヶ月後、私にいつもご注進くれるオーストラリアのバンビーノ(彼はコックの卵なのだ)から新たな世之介情報を聞くこととなった
世之介がついに、査証欲しさに11年上の彼女と籍を入れた(このへんの主観は私のものではないバンビーノの言葉通りである)と
三郎太もバンビーノも、もう少しでいなくなってしまうので、ここから先の世之介伝説を聞けないことが残念至極であるが、来月、即離婚となっても私は驚くことはないだろう

そうそう、ゴミ出し当番をすることのなかった世之介だが、アパートを退出する際、山のようなゴミを出して去っていったとさ

SFバカ

2007.5.5

恐ろしいことだ
つい先日、バッテリーを交換したぱかりだというに、またバイクが動かなくなったのだ
なけなしの万札を切ったというにバッテリーではなかったというのか
よく自宅まで無事にたどりつけたものだと思う
月光菩薩のおかげであろうか
昼一食のみ、晩御飯どころではない状況で、ふらふらと家に帰れば、おや灯りが
うちに居候をきめこんでいる女が、たっぷり楽しんだGW旅行から帰ってきていた
土産の香川の讃岐うどんがテーブルの上に
冷蔵庫に葱もない悲しい状況であったが、早速、ぶっかけにしていただきました
一息ついたらついたで、悲哀を感じる
GWのばかやろう、大嫌いだーーーっ

そんな気分にぴったりの一冊 SFバカ本「天然パラダイス篇」読了
田中啓文著「地獄八景獣人戯(じごくばっけいけものびとのたわむれ)」が収録されているが、これは「蹴りたい田中」で既読である

これ以外では、そやねえ、牧野修の「或る芸人の記録」がよかったで
人生 笑うてなんぼ、おもろうてやがて悲しき ちゅうやつやね
こういうを読むと、次は大阪人もええかもしれへん、と思うで

憎むな!殺すな!赦しましょう!

2007.5.4

竹熊健太郎著「箆棒な人々―戦後サブカルチャー偉人伝」読了
いやあ、面白かった〜
箆棒な人々とは、康芳夫・石原豪人・川内康範・糸井貫二の4人のことなのだが、私は本書を開くまで彼らがどんなことを成し得てきた人たちなのか全く知らなかった
正確に言えば、川内康範氏だけ、最近の森進一「おふくろさん」事件で作詞家として認識した程度なのだ
全く白紙の状態でワイドショーのニュースソース 川内康範氏VS森進一のやりとりを眺めていた時点では、かわいそうなお爺ちゃんを森が苛めているかのように思っていたのだから、 私もめでたい奴である
この時の川内康範氏の受答えに、強い好感と興味を持ち、これがこのインタビュー集を手にとるきっかけとなったのだから、ワイドショーも見ておくべきである
4人について、それぞれ思うことはたくさんあったのだが、康芳夫氏のみざっと整理してみる

▼康芳夫
【プロフィール】日本人の記憶に残る歴史的な興行・イベントをたちあげてきた人(注1)
1972年 モハメド・アリ対マックフォスター/1973年 石原慎太郎(注2)を隊長とする「ネッシー探検隊」発足/トム・ジョーンズ来日公演/大西部サーカス/ アラビア大魔法団/インディ500開催/1976年 オリバー君招聘(注3)/1976年 モハメド・アリ対アントニオ猪木のコーディネート/ 1977年 ハイチでのトラ対空手家山元守の試合(中止)(注4)/1979年 アントニオ猪木対アミン大統領(中止)/ 1982年 テレビ朝日によるロサンゼルス五輪独占放映権獲得(失敗)/1986年 「ノアの方舟探索プロジェクト」(中断)
出版分野においては、澁澤龍彦編集「血と薔薇」創刊/「家畜人ヤプー」(注5)出版など

注1;若い時の写真が稗田礼二郎だった
注2;良い子の皆さんは、大人になって偉くなるかもしれないので、万引きだとかしてはいけない
「ネッシー探検隊」はセーフのようである
注3;オリバー君を人間扱いするか、動物扱いするかで(人間の染色体は46、チンパンジーが48、オリバー君は47だった)揉めた為に、オリバー君は 京王プラザホテルの宿泊をキャンセルされ、別ホテルのスイートを余儀なくされた
なお、オリバー君は来日後、パリの金持に売られていったそうな、ドナドナ
注4;トラがドーベルマンの頭を撫でたら顔が半分なくなっていた
注5;新宿に「家畜人ヤプー・クラブ」を出店、暗黒舞踊・天井桟敷のメンバーを日当で雇うも、毎日血だらけ、割に合わない仕事に皆怒る

最後に川内康範氏については「箆棒な人々」を著された竹熊氏のblog「たけくまメモ」で読んだほうがわかりやすいであろう
川内康範先生の想い出(1)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_4d0b.html
川内康範先生の想い出(2)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_b18d.html

「箆棒な人々」での川内康範氏の戦争体験を読み終わったあと、私はただイラクの人々の復興を静かに祈っていた
憎むな!殺すな!赦しましょう!

ご都合の国

2007.5.3

アパートにおられる外国人の皆の衆へ郵便物を届けるのも、管理者たる私の業務の一つである
個々のプライバシーを尊重する為にも、設置ポストから直で取ってもらえるようにしてはいるのだが、日本語で書かれた書状の場合、やはりチンプンの人が多いのである
それで驚いたことがあって
税務署だの国保の知らせだの、彼らの情報を国なり自治体が、やけに詳しく素早く知っていやがるなあ、という点だった
(外国人の社員情報を企業が厚生労働省に(厚生省は法務省に提供可)届けることを義務づけた「届け出条項案」なるものも、しっかり先月末の「雇用対策法改正案」の中に盛り込まれた)

税金を取っている以上は、国や自治体からの通知書ぐらいは、英語表記にしてあげて欲しいと思うのだが、いかがなものか
国の都合ばかりではない
彼らが銀行で口座を作るとき、印鑑を作らなければならない、というのもなんだかなあ、と思った一つである
この件に関しては、いくつかの銀行に問合せてみたのだが、サインでは(その支店でしか使えないなど)機能が限られる場合が多い
印鑑といっても、James君の場合、カタカナでジェームスなどと彫るわけで、ちょっとお間抜け感をぬぐえない
すべて、サインに慣れていない銀行側の都合、英語で彫ることに慣れていない印鑑屋の都合が優先されているのではないだろか

怖気

2007.5.2

祥伝社文庫「おぞけ」読了
怖気(おぞけ)という言葉自体、東京では日常的にはあまり聞かない、使われない語句だ、と思う
茨城の昔の方言に入っていたので、昔は関東でもよく口にしていたのかもしれない

某サイトで使われてるのを読んだのがこの言葉と出会った最初だが、美しい日本語に(少なくとも)私はしみじみとした
ゆえに「おぞけ」がテーマでホラーアンソロジーを組むと言われたら、この道の作家として、はりきらざるを得ないのではないか
その結果として、粒選りの短編が集まったように思う

「歯」「夜行」「黒い手」「塵泉の王」「高速落下」「繭の妹」「虫愛づる老婆」「超鼠記」「弟の首」9人の作家による9編で構成されている
田中啓文著「塵泉の王」は短編集「異形家の食卓」で既に読んでいるのだが、こうしたアンソロジーの一つとして読むと、別の味わいも楽しむことができ、 名作「異形家の食卓」のレベルの高さも実感するので、一粒で二度美味しいってやつである
ホラーの定型みたいなものに飽きてしまったせいか、篠田節子「歯」・雨宮町子「高速落下」・津原泰水「超鼠記」が面白かった
なかでも、雨宮町子は気になったので、「死霊の跫」もチェキである

啓文漬け

2007.5.1

田中啓文著「星の国のアリス」読了
GW用とばかり、著者「田中啓文」で数冊選び、
図書館より借り溜めてあったのだが、はかどらず、いまだ一冊
吸血鬼SFと銘打ってはあるが、宇宙貨物船という密室での殺人事件の謎解きでもある

田中啓文作品に出てくる女性
たとえば、UMAハンター馬子なども、
馬子の仮面の下にダースベーダーのように佇む「田中啓文」を感じてしまう
登場人物は作者の分身であるのだから、まあ当然といえば、当然のことなのだが

アリスが終盤、冷静に状況を分析してみせるのだが
やっぱり後ろにいるだろー、そこそこ、田中啓文!!
と言いたくなってしまった
内容を知らずに描かれたと推察される表紙イラストとのアンバランスが素敵な一冊

Dinosaur Tales跡地TOPへ